一般消化器・肝・胆・膵科
一般消化器・肝・胆・膵科とは
疾患と治療方法
胆石
症状
上腹部痛、右季肋部痛、吐き気、黄疸など
概念
胆石とは、胆嚢あるいは胆管など胆汁の通り道に結石(石)ができて、その流れを滞らせたり菌の増殖を招いたりするために、炎症や黄疸を起こす病気です。よくある疾患ですが、炎症や黄疸の程度によっては命にかかわることもあり、軽くみてはいけません。胆石があっても無症状のことも多いのですが、胆石発作という強い腹痛を生じることがあります。みぞおちが痛むことから、胃が悪いと勘違いしている人も少なくありません。重症になると急性胆嚢炎や、閉塞性胆管炎という状態となり、胆嚢が壊死に陥ったり体中に菌が回ったりするために、緊急で治療を行わなくてはなりません。
治療
胆嚢結石は検診で発見される場合のような無症状の場合には経過観察となります。しかし、一旦炎症を生じた胆嚢は何度も発作を繰り返すことが多く、また自然 に治ることはないため、手術で取り除く必要があります。胆嚢を取り除いても、若干便通がよくなる以外にあまり大きな障害は残らないとされています。多くの 場合、腹腔鏡下胆嚢摘出術は3〜4ヶ所の小さい傷で手術を行い、通常の経過では術後4〜5日で退院できます。なお、総胆管に結石がある場合は、内視鏡的に結石除去を行います。
胆管結石
症状
結石が胆管をふさぐことにより上腹部(みぞおちやみぞおちの右側)に痛みを生じますが、結石が胆管にはまり込んでいない場合は無症状のこともあります。特に高齢の患者さんでは、吐き気や食欲不振といった軽い症状しか自覚しないこともあります。
概念
結石が胆管をふさぎ細菌感染を伴うと発熱、悪寒、黄疸(おうだん)(皮膚や眼球結膜が黄色くなること)、褐色尿を呈し急性胆管炎の状態となります。一度胆管が閉塞すると、細菌が血液中に広がり敗血症という状態になり、意識障害やショックを伴い致命的となることがあります。また、胆管の出口には膵臓の管(膵管)も合流しているため、出口(十二指腸乳頭部)に結石がはまり込むと急性膵炎を発症することもあります。急性胆管炎や急性膵炎を来すと、緊急入院や緊急の治療処置が必要となります。
内視鏡的治療
十二指腸まで挿入した内視鏡の先端から胆管の中にカテーテルと呼ぼれる細い管を挿入し、造影剤を注入して胆管の形状(場合によっては膵管も造影。)を観察する検査(内視鏡的逆行性膵胆管造影 ERCP: Endoscopic retrograde cholangiopancreatography)に引き続いて施行します。
総胆管結石を取り除く場合、まず胆管の出口(十二指腸乳頭部)を広げる必要があります。出口を広げる方法には内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)、内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)、内視鏡的乳頭大口径バルーン拡張術(EPLBD)がります。ESTは十二指腸乳頭部を電気メスで切開し胆管出口を広げます、EPBD, EPLBDはバルーン(風船)で出口を広げますが、大結石の場合はEPLBDという大径バルーン(径11~20mm)で出口を広げるため、大きな結石でも砕くことなく、比較的短い時間で結石除去が可能です。ESTやEPBD, EPLBDで胆管の出口を広げた後、結石除去用のバスケットやバルーン等の専用処置具を胆管内に挿入して結石を除去します。


急性虫垂炎(盲腸)
症状
上腹部痛から右下腹部痛、吐き気など
概念
大腸の付属物である、虫垂が炎症を起こして膿をためる疾患です。典型的には右の下腹が痛みますが、痛みの場所がはっきりしなかったり、吐き気だけが症状のこともあり注意が必要です。軽症では抗生物質だけで治りますが、炎症が強い場合には手術が必要となります。重症例では、膿が腹部全体に広がって腹膜炎となるか局所に膿だまり(膿瘍といいます)作って、命に関わることもあります。
治療
炎症程度が軽い場合には抗生剤の点滴で改善することがあります。しかし、炎症が強い場合手術治療が必要になります。経過がよければ2~3日で退院が可能です。
鼠径ヘルニア(脱腸)
症状
鼠径部のふくらみ
概念
ヘルニアとは、内蔵や体の一部が本来の場所から隙間を通ってはみ出してくる状態のことを言います。このため、様々な部位でいろいろと異なるヘルニアがあり混乱しやすいのですが、ここでは太股の付け根(鼠径部)におこるヘルニアについてお話しします。鼠径ヘルニアは、鼠径部の腹壁の弱い部分から、腸をはじめとする腹部の臓器がはみだしてくる病気です。弱くなっている腹壁の部位によって、内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニアなどに分けられます。内・外鼠径ヘルニアは男性に多く、大腿ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアは痩せた高齢女性に多い疾患です。長時間立っていたり、腹圧をかけたりするたびに膨らみが出たりしますが、横になって手で抑えこむと元通りすっきりします。出入りしているだけであれば単なる不愉快病ですが、脱出した腸管がはまり込んで抜けなくなり(嵌頓とよびます)腸の壊死をきたすと、命に関わることもあります。
治療
腹圧をかけるたびに、ヘルニアはゆっくりと増大していきます。薬物治療やヘルニア帯は全く無効ですので、手術が必要です。麻酔下にヘルニア嚢と呼ばれる、はみだした腸が収まる袋状の膜を切り取って出入り口を塞いだ後に、合成繊維でできたメッシュをあてて補強します。
痔核(いぼ痔)
症状
出血、疼痛、腫脹、痒み、下着汚染等
概念
痔核には直腸側にできる内痔核と、肛門側にできる外痔核があります。肛門の少し奥には血管の豊富なクッションのような部分があります。肛門への負担が重なると、その血管が太く蛇行するようになります。これを内痔核(いぼ痔)と呼びます。徐々にうっ血が強くなると出血を起こすようになります。さらに放置した場合、内痔核は大きくなり、肛門の外へ脱出するようになります。
治療
内痔核は良性疾患であり、治療を行う際は過度の侵襲は避けるべきというのが基本的な考え方です。治療の基本は外用薬と生活指導を中心とした保存療法ですが、出血や脱出を伴った場合は外科治療の適応と考えられます。当院では、手術療法と硬化療法(ジオン注射)を組み合わせて再発の少ない治療を心掛けています。
膵炎
症状
腹痛、吐き気、食欲不振、腹満感等
概念
膵臓は、食べ物の消化に必要な色々な酵素を分泌していますが、膵臓が正常に働いているときは、それらの消化酵素が膵臓自体を消化してしまわないように安全に働いているのですが、何かの原因でうまく機能しなくなったときに、膵臓は自分で自分を消化し始めてしまうのです。この現象が起こると、膵臓に浮腫(むくみ)、出血、壊死などの急性炎症が起こるのです。
炎症を起こした膵臓からは、他の臓器に悪影響を及ぼす様々な物質が多量に出され、血液中に流れ込みます。 そのために、心臓、肺、肝臓、腎臓、消化器官などに障害が及んで機能しなくなることがあるのです。
急性膵炎の原因となることで一番多いのは、アルコール(お酒の飲み過ぎ)です。次に多いとされているのは胆石で、胆石が膵液の出口をふさいでしまうために起こるのです。原因不明のものもあり、それを「突発性」と呼んでいます。
治療
急性膵炎の多くは、軽症から中等症で、絶食と絶飲と輸液により順調に回復していくのですが、発症から2~3日は経過を十分に観察しながら適切な治療(補液、分解酵素)をしますので、たいていの場合入院が必要となります。また重症化した場合集中治療が必要になることもあり、命の危険になることがあります。
肝臓疾患
内藤病院は 福岡県肝疾患専門医療機関 に指定されています。
肝臓病の患者さんの多くは症状がありませんが、肝硬変や肝がんへと進行することがあるため、早期治療が重要です。近年、C型慢性肝炎の治療は飛躍的に進歩し、多くの患者さんが飲み薬だけで完治する時代となりました。B型慢性肝炎も飲み薬により、多くの患者さんで肝炎の鎮静化が可能となっています。
一方、過食や運動量の低下による非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の患者数は増加しています。NASHも肝硬変や肝がんへと進行することから生活習慣の改善と合併症に応じた薬物療法が必要です。
当院では日本肝臓学会専門医が、管理栄養士や理学療法士とタイアップし、NASHに対して食事・運動面も含めて取り組んでいます。
【肝臓内科 川口 巧 担当】
さらに肝がん、転移性肝がん、肝良性腫瘍などの肝腫瘍に対しても、肝臓専門医による診断と治療を行っており、久留米大学病院と連携して、ラジオ波焼灼治療・肝動脈塞栓術・分子標的治療薬など、より高度な専門的治療を適切な体制で提供できるように取り組んでいます。
【肝臓内科 田中 正俊 担当】
当院で診断・治療を行っている肝臓病
- B型慢性肝炎、肝硬変
- C型慢性肝炎、肝硬変
- 非アルコール性脂肪肝炎、肝硬変
- アルコール性肝炎、肝硬変
- 原発性胆汁性胆管炎
- 自己免疫性肝炎
- ヘモクロマトーシス
- 肝細胞がん、胆管細胞がんなどの肝悪性腫瘍
- 肝血管腫、肝細胞腺腫などの肝良性腫瘍
- 転移性肝悪性腫瘍
消化器外科・腫瘍外科・肛門外科
内藤 壽則 (ないとう ひさのり)
久留米大学医学部卒業
資格
久留米大学外科非常勤講師
日本医師会認定健康スポーツ医
聖マリア病院連携登録医

消化器外科・腫瘍外科・腫瘍免疫
内藤 雅康 (ないとう まさやす)
福岡大学医学部卒業
ハーバード大学 ダナファーバーがん研究所 ドクターフェロー
資格
久留米大学医療センター特命医師(がんワクチンセンター)
日本外科学会外科専門医
日本がん治療認定医
緩和ケア研修会修了
所属学会
米国臨床腫瘍学会
日本外科学会
日本消化器外科学会
日本消化器病学会
日本癌治療学会
日本消化器内視鏡学会
日本大腸肛門病学会
日本臨床外科学会
日本癌学会
癌免疫外科研究会

消化器外科
星野 誠一郎 (ほしの せいいちろう)
宮崎大学医学部卒業
資格
日本外科学会 専門医・指導医
日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医・専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本大腸肛門病学会 専門医・指導医
日本消化器病学会 専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本腹部救急学会評議員
日本臨床外科学会評議員
九州外科学会評議員
インフェクションコントロールドクター
ストーマ認定士
所属学会
日本内視鏡外科学会

一般外科・消化器外科・腫瘍外科・緩和ケアチーム
久米 徹 (くめ とおる)
福岡大学医学部卒業
資格
日本外科学会外科専門医
所属学会
日本消化器外科学会
日本外科学会
日本緩和医療学会
日本大腸肛門病学会

肝臓内科
田中 正俊 (たなか まさとし)
久留米大学医学部卒業
資格
日本消化器病学会専門医
日本肝臓病学会専門医・指導医
日本超音波医学会専門医・指導医
日本内科学会認定医
所属学会
日本内科学会
日本肝臓学会
日本癌治療病学会
日本超音波医学会
マイクロウェーブサージャリー研究会
日本消化器病学会
日本癌学会
肝癌研究会

肝臓内科
川口 巧 (かわぐち たくみ)
久留米大学医学部卒業
資格
日本内科学会認定医
日本肝臓学会専門医・指導医・評議員
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本静脈経腸栄養学会専門医
日本病態栄養学会評議員
日本がん治療認定医機構(がん治療認定医・暫定教育医)
所属学会
日本糖尿病学会
日本超音波学会
日本肥満学会
日本リハビリテーション医学会
